最近よくニュースで聞くことが多くなった介護士による高齢者への虐待事件。
私も福祉の世界で働いている者として深く考えさせられます。
なぜ高齢者への虐待が起こってしまうのか。一体その背景には何があるのか。
今回は私自身が経験し、感じた虐待について書いていきます。
あくまで私自身の考えです。全ての福祉関係の方の意見ではありません。

一番に伝えたいのが、福祉の世界で働いている全ての人が虐待はいけない、暴力はいけないということは理解しています。
私も虐待はどんな理由であってもしてはいけないという考えです。
では、なぜ起きてしまうのか?
介護士の怒りとストレス
虐待、暴力をしてしまう理由の一番大きい部分が介護士の怒り、ストレスだと思います。
介護の場面だけではありません、対親、子供、友人でも怒りによって自身の我慢が限界になってしまう経験はだれしもあると思います。
ただ、普段の生活で我慢できない怒りを感じることってそんなにありません。
しかし、福祉の現場ではそのような場面によく遭遇します。
例えば、施設での夜勤の時。
長時間の拘束、あって無いような仮眠時間。疲れと眠気マックスの状態で30名近い利用者を一人で見なくてはいけないプレッシャーとストレス。
さらに、ある程度タイムスケジュールも決まっていて時間内に業務が終わらないと焦ってもきます。
そんな中で利用者が予想外の動きをして業務が出来なくなることがあります。
経験が豊富なスタッフなら臨機応変に対応できるのですが、経験の浅いスタッフだと焦りと疲労からイライラが限界にきてしまうこともあるでしょう。
そんな時に利用者に対して暴力が起きてしまいます。
嫌な話になってしまいますが、認知症の方は短期記憶が曖昧で、暴力を受けても覚えていないことが多々あります。
そして、暴力が日常化してしまうことによって、虐待になっていくのではないでしょうか。
業務、勤務形態に合うようなスタッフの人数ではありません。
長時間の夜勤を一人で行う。どこの施設もこのような勤務形態が多いかと思われます。
施設として、少ないスタッフを夜勤に何人も充てることは難しいのです。
夜勤が二人で行えていたら、スタッフが充実していたら、怒りの場面でも別のスタッフに愚痴を言うことで怒りも収まることもあるでしょうし、お互いが虐待、暴力の抑止力となることが出来るのではないでしょうか。
利用者との関係の変化
以前は利用者と介護スタッフってお互いリスペクトの関係が主でした。
利用者「忙しいところごめんね」
スタッフ「いえいえ、大丈夫ですよ。気にしないでくださいね」
という感じでお互い気遣っていました。これが普通でした。
しかし、今よく聞かれるのが
利用者「金を払っているんだから早くしろ!」
スタッフ「申し訳ございません」
極端ですが、こんな感じなことが見られるようになりました。
「サービス業なんだから仕方がない」では納得出来ないことも多々あります。
他の業種でもこのようなことは多くあると思いますが、理不尽なことを言われると少しずつイライラが、ストレスが溜まってしまいます。
そういう時に、同僚、上司からフォローがあればまだ救われます。
特に上司が介護スタッフへのフォローをしてくれると、介護スタッフも自分の気持ちを理解してくれているという安心感と信頼感が出来るのですが…
利用者と一緒になって介護スタッフを責めることもしばしばみられます。
利用者が主体というのは理解しています。ただ、理不尽なことを言われ、横暴な態度をとられ、それでも頭を下げないといけない。
福祉の業界はサービス業で以前に比べて多種多様な法人、企業が参入しています。
そうなると、利用者の取り合いにもなるし、利用料が高額な施設もあるでしょうし、施設の方針として過剰なサービスを求める所もあるでしょう。
それが悪いとは思いません。福祉施設だって利用者が選ぶ権利はあるし、競争社会なので施設の特色を出していくのは大事なことだと思います。
だからといって、利用者が何をしても良い、何を言っても良いではありません。
そのことを上司が、会社が理解してくれていることが大事です。上が理解してくれているというだけで、介護者のストレスは軽減出来ます。
施設で上に立つ人間は現場からの叩き上げの方が良いと思います。
現場で頑張ってた方なら現場がどのような状況か理解してくれているからです。
利用者のことを一番に考えるのは当然ですが、現場のスタッフの事も考えることが出来る。そんな上司が理想的です。
やっぱり慢性的な人手不足
福祉業界は慢性的な人員不足です。職員を選んでいる場合ではなく会社としては来るもの拒まずという状況です。
来るもの拒まずということは福祉に向いている人ばかりを採用することが出来ないということです。
私自身も、面接の場に立ち会うことがあるのですが、やっぱりこの業界に合わないなって感じる方はいます。
そんな風に感じながらもスタッフとして採用しなくてはいけない、夜勤を任せなくてはいけない施設が一杯あります。
まとめ
高齢者への虐待に関することを書いてきましたが、まだまだ見えない要因はあるはずです。
虐待はいけないこと。そんなことは皆知っています。
虐待のニュースが流れる度に虐待があったということしか報道されません。
なぜ虐待がおきてしまったのか。その背景には何があったのか。そこまで掘り下げて報道していただきたいと思います。
虐待をしてしまった介護士が悪いのは当然ですが、それだけで終わってほしくないのです。
少しでも福祉の業界を良くしたい。色々と巻き込んでよりよい業界を目指していきたいですね。